気になるパラドクス
いいよ。知ってるよ。
どうせ黙っていたら怖い大女に、可愛い雑貨が似合わないのはわかってます。
わかってるけど、好きなものと似合うものは違うもんよ。
似合うからって好きになるわけでもないし。
考えているうちに、三階の会議室に連れてこられた。
一応、会議室のドアをノックをしてから彼は苦笑する。
「村居さんも驚くかな」
磯村さんの呟きに彼を見て、それから開いたドアに振り返り、目を見開いて上を見上げた。
178センチある私が見上げる長身。黒のパーカーにジーンズ姿の男の人。
……すっごーくフランクな格好は場にそぐわないっていうか。何て言うか?
でも顔はいいな。
うん。眉もキリッとしていて男らしいし、目はすこーしたれ目でどっちかと言うと甘いマスク。
筋肉質なのか、ひょろっとは見えないし、何より私が見上げるってことは190センチはあるよね。
「……おお」
おお?
「いい感じだな」
何が?
思った瞬間に、顔が間近にあった。
「すぐキスできそうな身長差」
言われた瞬間、カッとして、その人を思いきりひっぱたいていた。
手が痛い。痛みにまたハッとする。
頬を押さえてうずくまるその人と、ドアの中では呆然と固まっている企画室の人たち。
それから、無表情の磯村くんがボソリと呟いた。
「今のは黒埼さんが悪いです。うちの女子社員に何をいきなりセクハラかましてるんですか」
「……うーん。かましたわけじゃないんだけどなぁ」
「ただの感想でも、今のはアウトです」
見下ろすと、黒埼さんと呼ばれた人は顔を上げ、目を細めて微笑んだ。
……頬を押さえてカッコ悪い。
いや、私のせいだけど。
「す、すすすみません」
「あー……まぁ、こちらこそ? 不躾でした。でも、ちょっと新鮮だったもんで」
すくっと立ち上がると、また少し屈んで顔を近づける。
「この距離に女の子の顔があるって」
そんな事に新鮮さを見いだすなんて……きっと、この人は女性関係にだらしない人なんだろうな。
どうせ黙っていたら怖い大女に、可愛い雑貨が似合わないのはわかってます。
わかってるけど、好きなものと似合うものは違うもんよ。
似合うからって好きになるわけでもないし。
考えているうちに、三階の会議室に連れてこられた。
一応、会議室のドアをノックをしてから彼は苦笑する。
「村居さんも驚くかな」
磯村さんの呟きに彼を見て、それから開いたドアに振り返り、目を見開いて上を見上げた。
178センチある私が見上げる長身。黒のパーカーにジーンズ姿の男の人。
……すっごーくフランクな格好は場にそぐわないっていうか。何て言うか?
でも顔はいいな。
うん。眉もキリッとしていて男らしいし、目はすこーしたれ目でどっちかと言うと甘いマスク。
筋肉質なのか、ひょろっとは見えないし、何より私が見上げるってことは190センチはあるよね。
「……おお」
おお?
「いい感じだな」
何が?
思った瞬間に、顔が間近にあった。
「すぐキスできそうな身長差」
言われた瞬間、カッとして、その人を思いきりひっぱたいていた。
手が痛い。痛みにまたハッとする。
頬を押さえてうずくまるその人と、ドアの中では呆然と固まっている企画室の人たち。
それから、無表情の磯村くんがボソリと呟いた。
「今のは黒埼さんが悪いです。うちの女子社員に何をいきなりセクハラかましてるんですか」
「……うーん。かましたわけじゃないんだけどなぁ」
「ただの感想でも、今のはアウトです」
見下ろすと、黒埼さんと呼ばれた人は顔を上げ、目を細めて微笑んだ。
……頬を押さえてカッコ悪い。
いや、私のせいだけど。
「す、すすすみません」
「あー……まぁ、こちらこそ? 不躾でした。でも、ちょっと新鮮だったもんで」
すくっと立ち上がると、また少し屈んで顔を近づける。
「この距離に女の子の顔があるって」
そんな事に新鮮さを見いだすなんて……きっと、この人は女性関係にだらしない人なんだろうな。