気になるパラドクス
「聞いてもいいですか?」

「なにを?」

食べ続ける彼を、いい食べっぷりだと感心しながら首を傾げる。

「からかっているんじゃないのなら、私のどこが気に入ったのか教えてください」

「志望動機聞いてくる面接官みたいな聞き方じゃ、教えたくない」

うん。まぁ、ちょっと堅苦しかったとは思うけどさ。

ぶりっ子しても気持ち悪いだろうし……主に私が。

「教えてくれないと泣きますよ?」

「泣くのか? ここで?」

どーしてワクワクしているかわからないけど、私が人前で泣くと思って……るわけないよね。この楽しみにしてる顔は。

「じゃー、人知れず泣きます」

「あ。それは困るから答える」

わぁー……あなたの頭でどういった経緯でその結論に至ったのか知りたいわー。

半笑いしていたら、黒埼さんはご飯を飲み込んで、それから真面目な顔をした。

「とりあえず、目」

「このつり目で、ちょっと怖いと言われ続ける目ですか?」

「初めて会った時、それは気にならなかったな。目を真ん丸にしてたし」

思い出しながらサンドイッチを食べる。

そうかもね。私が見上げる人はほとんどいないもの。驚いた驚いた。

「それから丁度良さそうな身長。平均身長の女と歩いたら子供をつれ歩いている気分になるから、ある程度の身長がないとそういう対象にならない」

「……そ、そう」

だいたいの男の人を見下ろしちゃうような大女が好みなの……。

「それからたぶんDカップで、60くらいで、80か85ってところだろ?」

なんの話?

キョトンとすると、彼はニヤニヤしながら私の胸の辺りを眺めていた。

「ちょっと! どーいうオチつけてくんのよ!」

「別にオチつけたわけじゃないよ。いい女だなって思ったら口説くのが男のさがだろ」

どこの国籍なのよ! それじゃ“いい女”がいたら、ほいほいナンパするのかあんたは!
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