気になるパラドクス
この人は、大きいくせに……どうして気配もなく後ろに立てるんだろう?
「村居……さん?」
あ。えーと。
黒埼さんは黒のキャップに、いつものミリタリージャケット。それからジーンズにスニーカー姿で、肩に段ボールを抱えている。
「オーナー……お知り合い、ですか」
店員さんは固まっている私と、黒埼さんを交互に見ていた。
「ああ。まぁ……例の企画の会社の人だけど」
「そうなんですか。あ。在庫下さい。今、フロップの在庫の話をしていたところなんです」
彼女は楽しそうに黒埼さんから段ボールを受け取り、その場で開けてくれた。
「在庫管理くらいしっかりやれよー」
黒埼さんはキャップを被り直し、レジの方へ向かっていく。
それをぼんやり見送ると、ちょっと拗ねたような顔をしていた店員さんが、フロップの可愛いイラストの入ったダークブルーのスマホカバーを取り出してくれた。
「村居さん。フロップ好きですね」
「え、えーと。はい」
微かに視界の隅で、黒埼さんが吹き出したような気もする。
……もう、いいや。
「好きです。ダメですか」
「いえ。村居さんフロップのお得意様ですし」
慌てて両手を振る彼女に、しょんぼりとする。
……お得意様かぁ。
「真理。接客代われ」
黒埼さんがスタスタ戻ってきて、店員さんが離れていった。
「……悪いな。あいつはいつもひと言余計なんだ」
「黒埼さんも人の事は言えないです」
「まぁな」
小さく笑われ、それから手に持っていたフロップのカバーが取り上げられ、黒埼さんは段ボールの前にしゃがんだ。
「お前はこっちのイメージじゃないな。こっちかこっちだ」
パステルピンクとエメラルドグリーンのカバーを差し出され、私もそれをしゃがんで受け取ってから微笑む。
うん。可愛い。ピンクかなー。
でも35歳でピンクはダメかな。でもピンクの方が好きだしな。
ニコニコしていたら、黒埼さんが頬杖をつきながら私を見ていた。
「な、なんでしょう」
「そっちだな」
言われて、エメラルドグリーンのカバーを取り上げられた。
……見透かされてるー!
「村居……さん?」
あ。えーと。
黒埼さんは黒のキャップに、いつものミリタリージャケット。それからジーンズにスニーカー姿で、肩に段ボールを抱えている。
「オーナー……お知り合い、ですか」
店員さんは固まっている私と、黒埼さんを交互に見ていた。
「ああ。まぁ……例の企画の会社の人だけど」
「そうなんですか。あ。在庫下さい。今、フロップの在庫の話をしていたところなんです」
彼女は楽しそうに黒埼さんから段ボールを受け取り、その場で開けてくれた。
「在庫管理くらいしっかりやれよー」
黒埼さんはキャップを被り直し、レジの方へ向かっていく。
それをぼんやり見送ると、ちょっと拗ねたような顔をしていた店員さんが、フロップの可愛いイラストの入ったダークブルーのスマホカバーを取り出してくれた。
「村居さん。フロップ好きですね」
「え、えーと。はい」
微かに視界の隅で、黒埼さんが吹き出したような気もする。
……もう、いいや。
「好きです。ダメですか」
「いえ。村居さんフロップのお得意様ですし」
慌てて両手を振る彼女に、しょんぼりとする。
……お得意様かぁ。
「真理。接客代われ」
黒埼さんがスタスタ戻ってきて、店員さんが離れていった。
「……悪いな。あいつはいつもひと言余計なんだ」
「黒埼さんも人の事は言えないです」
「まぁな」
小さく笑われ、それから手に持っていたフロップのカバーが取り上げられ、黒埼さんは段ボールの前にしゃがんだ。
「お前はこっちのイメージじゃないな。こっちかこっちだ」
パステルピンクとエメラルドグリーンのカバーを差し出され、私もそれをしゃがんで受け取ってから微笑む。
うん。可愛い。ピンクかなー。
でも35歳でピンクはダメかな。でもピンクの方が好きだしな。
ニコニコしていたら、黒埼さんが頬杖をつきながら私を見ていた。
「な、なんでしょう」
「そっちだな」
言われて、エメラルドグリーンのカバーを取り上げられた。
……見透かされてるー!