気になるパラドクス
誰を好きになったとしても、傷つくときは傷つくだろうし、誰かを好きにならなくても、傷つく時は傷つく。

そんなことはわかっているし、わからないわけじゃない。

でも……。

「たぶん……傷つくと思う」

「うーん。まぁ、俺は察しのいい人間じゃないから、傷つけることもあるだろうな」

ハッキリと馬鹿正直に答える黒埼さんを、ぼんやりと見つめた。

……普通。こういう時は傷つけないよ、とか、言うんじゃないかと思う。

「確かに、見た目のクールなイメージとはお前は真逆をいってそうだけど、それは想像の範疇だし。そもそもギャップで言ったら、俺の方が半端ないだろ?」

うん。こんな大男が、あんなファンシーなカエルをデザインしたって、何だか想像つかなかったし。

「それに背の高い女は俺の好みなんだし、綺麗な女ならなおさらだが」

「……き」

綺麗だと?

難しい顔をすると、黒埼さんは軽く笑った。

「綺麗だろ? お前としては可愛いって言われた方が嬉しいんだろうが、こればっかはなぁ? でも、女なんて化粧で化けるし」

別に“かわいい”なんて言われたい訳じゃないけど“キレイ”だとも言われたことがない。

でも、化けるって……。

「化けない」

冷静に、ツッコミ満載で片手を振ったら、不満そうに鼻を鳴らされた。

「いや、だからなぁ? お前は単に魅せ方が悪いだけなんだが。素材は悪くないし……って、言っても、そのままでいいんだが」

悪いと言ったり、そのままでいいと言ったり、どっちなの?

「悪い虫がついても困るし。未だに連絡先も教えてくれないようなガードの堅さ見せてくれるし」

「聞かれていないもん」

「ああ。じゃあ教えて?」

あっさりスマホを取り出して、当然のように言う黒埼さんにこめかみを押さえた。

森のクマさんに、日本語が通じるんだろうか?
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