気になるパラドクス
なんでしょうね、この人。

「……教えなくてもいいなら、教えませんけど」

お腹を抱えて笑っている黒埼さんに、目を細めて睨み付ける。

教えろって言ったくせに、笑ってそれどころじゃ無さそうだし。
確かに、ちょっと極端な反応だったかもしれないけどさ。

「お前、フロップつけすぎだろ」

涙目になりながら言うから、瞬きした。

私の手のひら返したような態度に笑ったわけじゃなく……スマホにつけられたスマホアクセに大爆笑したらしい。

確かに、カバーはフロップのイラスト付きだし、ストラップ……だけではなく、じゃらじゃらとフロップかミリーがついているよ。

だからって、そんなに笑わなくてもいいじゃないか。

「……プライベート用くらい、いいじゃない」

「あ。プライベート用を教えてくれるんだ? んじゃ、気が変わらないうちに教えて」

急に真顔になって、スマホを取り出して、連絡先を教えるとそれを楽しそうに登録してる。

……読めない。

「じゃ、友達も誘ってご飯でも食べにいかないか? 真理に叩き起こされて飯食ってないんだ。付き合ってくれたら俺も荷物持ちくらい付き合うけど」

「それは……どうだろう。美波いるし……」

ドアがカチャリと勝手に開いて、美波がいきなり入ってきた。

「おごりなら、晩御飯の方が嬉しいです」

目を点にして美波を見つめるけど、黒埼さんはわかっていた様子で驚きもしない。

ニヤッと笑いながらも、スマホをポケットにしまって顔を上げる。

「さすがに晩まで持たないよ。軽く食ってから買い物して、晩飯でどうだ?」

「それならオーケーです。ついでに車なら、今日、そこにあるソファ買っちゃおうかな」

……勝手に話は進んでるし。

「どれ? 配送必要なら、無料で宅配もするけど」

立ち上がる黒埼さんに、美波は小首を傾げて苦笑している。

「宅配は無理。私は家にいることほとんどないし。受け取りなら遠慮する」

ポツンと残された形の私を見下ろし、彼は頭をポンポンしてくれた。
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