気になるパラドクス
「悪い?」
「悪くない」
彼はニヤリと笑うと、そのまま製図用のデスクに向かい、椅子を軋ませて座る。
「だいたい、自分のデザインしたものに喜んでる女を見て、なんだこいつって思う男がいたら、それこそどうかしてると思うぞ?」
振り返りもせずにそう言って、デスクのスタンドライトをつけると、ペンを持つ黒埼さん。
それきり沈黙が落ちた。
後ろから見る彼は、何だか珍しい。
考えてみたら、後ろ姿なんて見たことない気がする。
少し長めの髪を時々邪魔くさそうにかき上げて、ペンをいくつも変えながら線を引く音が響いた。
……思えば不思議。パソコンに向かっている男の人はいつも見ているけど、ペンを持つ男の人ってあまり見ない。
そっと近寄ってみて、その横顔を眺めた。
髪はよく見ると毛先がちょっとくせ毛なのかな。でも羨ましいくらいくせは少なさそう。
目はやっぱり少し垂れ目がち。眉は太すぎず細すぎず、ちょうどいい感じに真っ直ぐで、鼻もスッキリ通っていて高い。唇は……少し薄めかな?
でもそれがアクセントと言うか、ハッキリ男性的と言うか……。
「……後は色塗るだけだから、もう少し待ってろ」
ちらっと視線が合って、ソファに戻った。
……うん。真剣に仕事をしている男の人って、どうしてカッコ良くみえるんだろう。
両手でマグカップを持ってココアを飲むと、そのマグカップに描かれた、白いワンピの可愛らしい女の子を見て苦笑する。
これはもしかして、私の為に買ってくれたのかな? 一応、あの時に選ばせてくれたもんね?
「黒埼さんて、優しいね」
ポツリとひとり言みたいに呟いたら、
「そうでもない。けっこうキレやすいぞ?」
返事と一緒に、椅子を軋ませて振り返られた。
……まだ、むこう向いてて欲しかったかなー?
「悪くない」
彼はニヤリと笑うと、そのまま製図用のデスクに向かい、椅子を軋ませて座る。
「だいたい、自分のデザインしたものに喜んでる女を見て、なんだこいつって思う男がいたら、それこそどうかしてると思うぞ?」
振り返りもせずにそう言って、デスクのスタンドライトをつけると、ペンを持つ黒埼さん。
それきり沈黙が落ちた。
後ろから見る彼は、何だか珍しい。
考えてみたら、後ろ姿なんて見たことない気がする。
少し長めの髪を時々邪魔くさそうにかき上げて、ペンをいくつも変えながら線を引く音が響いた。
……思えば不思議。パソコンに向かっている男の人はいつも見ているけど、ペンを持つ男の人ってあまり見ない。
そっと近寄ってみて、その横顔を眺めた。
髪はよく見ると毛先がちょっとくせ毛なのかな。でも羨ましいくらいくせは少なさそう。
目はやっぱり少し垂れ目がち。眉は太すぎず細すぎず、ちょうどいい感じに真っ直ぐで、鼻もスッキリ通っていて高い。唇は……少し薄めかな?
でもそれがアクセントと言うか、ハッキリ男性的と言うか……。
「……後は色塗るだけだから、もう少し待ってろ」
ちらっと視線が合って、ソファに戻った。
……うん。真剣に仕事をしている男の人って、どうしてカッコ良くみえるんだろう。
両手でマグカップを持ってココアを飲むと、そのマグカップに描かれた、白いワンピの可愛らしい女の子を見て苦笑する。
これはもしかして、私の為に買ってくれたのかな? 一応、あの時に選ばせてくれたもんね?
「黒埼さんて、優しいね」
ポツリとひとり言みたいに呟いたら、
「そうでもない。けっこうキレやすいぞ?」
返事と一緒に、椅子を軋ませて振り返られた。
……まだ、むこう向いてて欲しかったかなー?