気になるパラドクス
5
*****
綺麗に晴天の土曜日。
この間、黒埼さんに『飯にしよう』と言われてから、戦々恐々と週末まで過ごした。
まわりの部下からは何となく怖がられ、磯村くんからは苦笑されつつ、そして終いには、迎えに来た黒埼さんに玄関先で変な顔をされる始末。
「お、おかしい?」
「うん。どこの参観日に行くかーちゃんかと思う」
かーちゃんて言われた!
確かに、グレーのスーツにブラウスは年齢的に微妙?
でも、きちんとした格好を目指した結果なんだけど……。
「そんな形式ばったもんじゃないから、落ち着けよ。ちゃんとしたのは、お前の親も交えてだろ?」
「……ああ、やっぱりそこまですでに考えてるの」
「うん。狙ったら逃がさないように考えてるんだ」
そんな物騒な言葉を、とっても無邪気に清々しく言われても笑うしかないんだけどな。
「とりあえず、着替えるから待って」
ドアを閉めようとしたら、ガッツリ足を挟み込まれた。
それを無言で見下ろすと、頭上からちょっとだけ不気味な『ふっふっふっ』と言う笑い声。
「部屋で待っててもいいよな?」
「……私の部屋、ワンルームなんだよね?」
「知ってる。この間カーテン越しにベッド見えてたから。この寒空に、彼氏を部屋の外に待たすつもりか?」
あー……それはダメかな?
「寒い感じ?」
ドアを開いて黒埼さんを通すと、頷く彼を見上げる。
やっぱり黒埼さんは背が高いなぁ。
そう思って、とりあえずドアを閉めたら、せっかくまとめた髪をうきうきほどかれた。
今日は苦労して、天パを押さえてまとめていたのに……。
「……今日は下ろしたい気分なの?」
「そう。そして、今日はこれをつけたい気分なの」
スッと真っ白な幅広のカチューシャをつけられて、目を真ん丸にする。
綺麗に晴天の土曜日。
この間、黒埼さんに『飯にしよう』と言われてから、戦々恐々と週末まで過ごした。
まわりの部下からは何となく怖がられ、磯村くんからは苦笑されつつ、そして終いには、迎えに来た黒埼さんに玄関先で変な顔をされる始末。
「お、おかしい?」
「うん。どこの参観日に行くかーちゃんかと思う」
かーちゃんて言われた!
確かに、グレーのスーツにブラウスは年齢的に微妙?
でも、きちんとした格好を目指した結果なんだけど……。
「そんな形式ばったもんじゃないから、落ち着けよ。ちゃんとしたのは、お前の親も交えてだろ?」
「……ああ、やっぱりそこまですでに考えてるの」
「うん。狙ったら逃がさないように考えてるんだ」
そんな物騒な言葉を、とっても無邪気に清々しく言われても笑うしかないんだけどな。
「とりあえず、着替えるから待って」
ドアを閉めようとしたら、ガッツリ足を挟み込まれた。
それを無言で見下ろすと、頭上からちょっとだけ不気味な『ふっふっふっ』と言う笑い声。
「部屋で待っててもいいよな?」
「……私の部屋、ワンルームなんだよね?」
「知ってる。この間カーテン越しにベッド見えてたから。この寒空に、彼氏を部屋の外に待たすつもりか?」
あー……それはダメかな?
「寒い感じ?」
ドアを開いて黒埼さんを通すと、頷く彼を見上げる。
やっぱり黒埼さんは背が高いなぁ。
そう思って、とりあえずドアを閉めたら、せっかくまとめた髪をうきうきほどかれた。
今日は苦労して、天パを押さえてまとめていたのに……。
「……今日は下ろしたい気分なの?」
「そう。そして、今日はこれをつけたい気分なの」
スッと真っ白な幅広のカチューシャをつけられて、目を真ん丸にする。