一目惚れの片想い
「春陽は、あの通り内気な子でね
奏がいないとダメなんだ
双子みたいに育ったからかな」

「あたしも、春陽がいないとダメだよ!」

「そろそろ、春陽離れしないと、春陽に
彼女が出来たら、うざがられるぞ!?」

「こっ…困る!」


鈴木さん、可愛い!!

想像だけで、すでに困っている

吉岡さんが、からかって遊んでいるのがわかる


めちゃくちゃ困っている鈴木さんを見るのは、初めてだ


「春陽に嫌われたらやだよぉ」


「はははっ!!冗談だから!なっ!?」




懸命に慰めるけど、すでに落ち込んでる

鈴木さんの意外な一面を見た


「早く春陽に会いたい」

「じゃあ、準備しておいで
しばらく、一緒に暮らそう」

「本当!!やったぁ!!」

大喜びだけど、この部屋の物にあまり
見覚えがないため

「勝手に持っていっていいのかな?」

と困っていた

記憶がないって、大変だな


荷作りしているとき


「コレ…」


「何?」

「何ですか?それ」


「……コレ、あたしの宝物なの!!」  


鈴木さんが、宝物だと言って

抱きしめたのは、可愛い名刺入れ

それは、普段使っている物と違い

吉岡さんも初めて見たようだ


「ふふふっ 嬉しい!!
ちょっと、思い出したことがある」


「なに?」


「田中さんって、玲音くんのお友達じゃないよね!?」

「え?思い出したの?」

「田中さんって、M高校だよね?」

「なんで、知ってるの?俺、鈴木さんとそんな話したことないよ?」

「思い出した!!うわっ!!
あれ、田中君だったのか!!」

「え?なに?何ですか?」

「玲音くん!!内緒!!」

「教えて下さいよーー!!!」



部屋にある物を色々見たけど

鈴木さんが、反応したのは、あの名刺入れだけ

時々、吉岡さんが
「コレ、お前のお気に入りだったんだぞ?」

って、見せても

「しらない」


覚えてなかった



鈴木さんが準備している間


吉岡さんがコソッと教えてくれた


「奏の初恋は、田中君だよ!
覚えてる?」







マジっすか!!!!!










「5年前なら、覚えてますけど」

「違うよ、6年前だな
高3の文化祭!M高校に遊びに行ったんだよ!ちょっとはぐれてる間に、助けてくれた人が凄く格好良かったってさ
玲音くんとは、大違い!!って、言われたから、覚えてる…」

「すみません…身に覚えがないです」

「5年前って、ファッションショーだろ?
あの日から、心に決めた人がいるからって
俺にひっつかなくなったんだよ
それは、田中君だってわかってたんだけど
まさか、その前からだったなんてな」



文化祭…

鈴木さんみたいに可愛い子だったら

絶対、忘れないはず



「準備できたよ!!!」



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