一目惚れの片想い
*田中 草平*





なんの進展もしないまま

ライブが終わった


最終日に至っては、会話すらなかった




「田中君!!まだ、機会はあるさ!!」

「そうだぞ!!田中!!元気出せ!!」

「また、企画しましょう!!」

「よし!俺も手伝ってやるから!!」

「僕も頑張る!!」

「私に出来ることは、何でも言ってくれ!」




今日は、吉岡 米岩 森永 広瀬 

そして、春陽 湊

初めてこのメンバーで打ち上げというか

反省会、というか

俺を励ます会



なにせ、落ち込んでいる




「まぁ、記憶が戻ってないってわかったんだから!田中!!お手柄だ!!」


バシッと先輩から背中を叩かれる





飲み物待ちの現在

おしぼりをいじっている




ガラッーーー


部屋の扉が開いて、やっと飲み物が来たかと、顔を上げ固まった



「よかったぁ~いたぁ~」



トテトテと俺の前に正座した

鈴木さん



俺だけじゃなく、皆

口開いたまま


固まっている


「え?鈴木さん?来てくれたの?」

「田中さんが来いって言ったんでしょ?」


にっこり笑って、首をコテンと傾けた


可愛い~ とか、言ってる場合じゃない!


「田中さん!!」

「失礼しまぁーす!!お待たせしました!」


鈴木さんが何か言おうとしたら、店員が飲み物を持ってきた


「奏、何飲む?」


吉岡さんは、自然に振る舞おうと声をかける

「私は、家にシチューがあるの!」


ややキレてますが??


「とりあえず、ビールで…」


注文するんだ……


ちょっと笑ってしまった


「田中さん!!これ貰うね!」


喉が渇いていたのか、ゴクゴクと俺のビールを飲んだ


「はぁ!?乾杯とかするだろ!!」

「いい飲みっぷりだな」


なんと、一気に飲んでしまった


「田中さんの仰る通り、記憶は戻ってませんけど、私は鈴音さんといます!
だから、これ持ってて下さい!
それと、田中さんの携帯番号教えて!!」


鈴木さんは、早口で言って

あの名刺入れを俺にさしだした


俺は、名刺を出して

携帯番号を書き入れた


「いつか、連絡します!!」


いつか……ですか?


「ビールご馳走様でした!!じゃあ!!」


え!?

帰るの!?


「今日は、シチューなので
鈴音さん達待たせてるから!」


「鈴木さん!!連絡、待ってます!」


鈴木さんは、いつからこんなに大胆になったのだろう


俺の部屋で、あんなに恥ずかしいと

騒いでいたのに


皆の前で、俺にキスをした



「いつか… 必ず、連絡します!!」



バタバタと帰って行った



鈴木さんは、シチューがよっぽど好きなのかな?




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