禁断の部屋

 だけど全然怖くないわ!!

 だってわたしは怒っているのだから!


「貴方が、『開けるな』と言うのが悪いのよ!!」

 リュシアンが本当に部屋に入ってほしくないと思うのならば、人の心理を逆撫でするような言葉は使うべきではなかったのよ!

 わたしは怖じ気づくことなく彼を睨み続けていると、リュシアンは観念したかのように骨張った手で顔を覆った。


 広い肩がどこか小さく見えるのは気のせいかしら。


 しばらくした後、彼は唸るような低い声で言い訳をはじめる。



「……路上で真剣に絵を描く君の姿が目に入って……気がつけば、ずっと見ていた」


「どうして言ってくれなかったの?」

 この一件がなければ、きっと彼のことよ、ずっと隠し通して生きていくに決まっている!

 そうなれば、わたしはどうやって彼のことを知り得たというのかしら!!


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