禁断の部屋

『今』という『今』までは、だけれどね。

 大富豪と貧しい家柄の人間。一見すると何の接点ももたないわたしたち。


 立場が違いすぎるリュシアンとわたしが、どうして一緒に住むことになったのかというと、話は少し前に遡る。


 わたしの両親は、わたしが十二歳の時に流行病で亡くなったの。

 わたしは物心が付いた時からずっと、路上でしがない絵を描いて生活していたわ。


 わたしが描いた絵は、展示会で出展するといつも知らないうちに売れていて、そのお金でなんとか生計を立てていたんだけれど、風邪をこじらせて寝込んでしまって、ある日、絵が描けなくなってしまったの。


 わたしが寝込んでいる間、借金が溜まりに溜まってしまって、キャンバスや絵の具を買うお金すらも無くなってしまった。


 状況ががらりと変わったのは今朝のことよ。

 とうとう堪忍袋の緒が切れたんでしょうね。借金取りが家にやって来たの。


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