ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
「どうって、また怒られただけだよ。
ナニカの話題で今日も校内がざわついてるから、昨日の呼び出しだけじゃ桜井先生の怒りが治まらないって感じ。
怒られた内容は、昨日と変わんなかった。
桜井先生はさー、なんつーか、しつけーよな。
ニコニコしてれば美人なのに、8割がた怒ってるよな」
真斗は敬太の肩を叩いて、「お疲れさん」と苦笑い。
琴美は座っていた椅子から立ち上がって、代わりに私を座らせ、
「霞もお疲れさま。大変だったね」と労ってくれた。
絵留は肩までのゆるふわな髪の毛を人差し指にクルクルと巻き付けて遊びながら、ちょっと呆れた感じで私に言う。
「だから私、言ったのに。
面倒なことになるから、あんまり騒がない方がいいよって」
絵留はいつも、おっとりとした喋り方をする。
だから、キツイこと言われている気持ちにはならないけど、言われたことは私に対する非難に近いもの。
昨日から絵留は不機嫌で、それを感じ取っているのは私や琴美や梨沙、いつも一緒にいる仲良し女子メンバーだけだろう。