ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
ナニカを操っているのは誰
◇◇◇
今日は夏休みの最終日。
自宅の自分の部屋で私は机に向かい、勉強していた。
これまでの長期休暇の最終日といえば、決まって終わらない課題に追われているところ。
でも、この夏休みは違う。
課題はとっくに終わっていて、今やっているのは、自分で買ってきた分厚い数学の問題集。
夏休みの間中、ほとんど外出せずに勉強ばかりしていた。
勉強は、ハッキリ言って嫌いだが、今はありがたい存在。
やることがあると気が紛れるし、集中すれば嫌なことを考えずにすむから、心の痛みが少しだけ和らぐ気がして……。
13時を過ぎた時、お母さんがドアをノックして顔を覗かせた。
「霞、仕事に行ってくるからね」
「うん、いってらっしゃい」
「……大丈夫?」
うちの両親は小料理屋を営んでいるので、出勤はこの時間帯で、帰ってくるのは深夜になる。
夏休みの間ずっと、お母さんは出かける前に私に「大丈夫?」と心配そうに聞いてきた。
「大丈夫だよ」と、無理して笑顔を作る私。
お母さんは、「何かあったら電話してね」と言い置いて、出かけて行った。