ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜



ふたりの死は、私に原因がある。

それが重く心にのしかかって、苦しくて仕方ない。

それと同時に、敬太のことが心配でたまらなかった。


飯塚先輩がナニカに殺された後、敬太はしつこく警察署に通って、ナニカの存在を訴え続けていた。


でも、今回の事件後に敬太は、それをしなかった……いや、できなかったみたい。


真斗の遺体に縋って泣き叫んだ後は、何もする気になれないほど憔悴して、家に引きこもっているみたいで……。


真斗と絵留の合同葬儀には、クラス全員が参列した。


私も含めて全員が泣いている中で、敬太だけ泣いていなかった。


既に涙は枯れ果てたといった顔をして、虚ろな目でずっと真斗の遺影を見つめていた。



あの日の敬太を思い出し、また心がずっしりと重たくなった気がした。


私はベッドの上で、うつ伏せになる。

ベッドカバーに顔を押し当てると、目の周りの布地が涙を吸って、じんわりと湿っていった。


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