ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜



絵留はいつも柔らかく笑っている子で、喋り方も含めて癒し系の可愛らしさがある。


だからみんな、騙される。


絵留は……本当は自分が常に話題の中心にいないと不機嫌になる子なんだよ。


1年の時から絵留と仲良くしてきた私でも、それにはっきりと気づいたのは、つい最近のことなんだけど。


昨日から学校中の話題がナニカ一色で、唯一の目撃者である私はビックリするくらいにみんなに構われていた。


今まで話したことのない他クラスの男子にまで声をかけられるし、絵留はそれが面白くないみたい。



「私はもう、騒いでないよ。
なるべく大人しくしようと思ってるのに、周りが……」



しゅんと肩を落として、モソモソと言い訳する私。


琴美は絵留と私の間で、

「霞が悪いわけじゃないし、絵留も怒ったらダメだよ。仲良くね?」

と、喧嘩になる前に仲裁に入ってくれる。



「別に私は、怒ってないよ。

霞は私の大事な友達だから、先生に怒られて可哀想だと思ってるんだよ?

ね、今からでもアレは見間違いでしたってことにしない?そうすれば噂もすぐに消えるよ」



自分が不利になりそうな予感を感じたのか、絵留は私を心配しているような言い方に変えてから、そんな提案をしてきた。


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