ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
絵留は一見いつも通りのふんわりした笑みを浮かべているけど、私を見る目は冷えていた。
琴美もそれに気づいているみたいで、ヤバイなーと言いたげな顔をして絵留を見ている。
そんな私達女子の気持ちは、男子達にはわからないみたい。
敬太も真斗も、その他2名の男子も、ナニカの詳しい特徴を話せと、目を輝かせて私に迫ってくる。
敬太が黒板の前に行き、白いチョークでナニカについて書き始めた。
【・黒くてドロドロしている。
・輪郭はぼやけている。
・移動した後には、黒くてヌメヌメした線状の跡が残る。】
「あと他には?」と敬太が聞くと、真斗が言った。
「トイレのドアを開けようとしたとき、なんか音がしなかった?
ブクブク、ボコボコっていう音。
あれって、ナニカが発する音なのかな?」
「それな! 忘れるとこだった。
真斗、サンキュー」
敬太が黒板に【・ブクブク、ボコボコと音を鳴らす】と付け足した。