ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
全体的な形は、膨らんだお餅みたいな感じ。
ドロリとしている雰囲気を出そうとして、下に向けて垂れているような線も描いた。
こんな感じかな……。
うーん、分かっていたけど、私ってやっぱり絵が下手くそだ。
こんなんで敬太が満足してくれるか自信がないよ……。
「これで、いいかな?」と、隣に立つ敬太に恐る恐る聞いてみると、敬太は一層ワクワクした顔をして、私の下手くそな絵に興奮していた。
「それって、手じゃね?
すげー!ナニカって、手があるんだ!」
え……手?
壁に乗っかっているお餅みたいな塊の、下に垂れている二つのU字型の線を、敬太はナニカの手だと決めつけていた。
そう言われたらそんな風にも見えるけど、私には手を描いたつもりはなかった。
「な、な、顔はどこだ?
目とか口はねーの?」
「あ、えーとね、そう言えば、ここら辺にポコっと膨らんだ丸い物が2つと、この辺に切れ込みみたいな……」
敬太に言われて、膨らんだお餅の中に小さな丸を2つと、横線を一本書き込んだ。