ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜



廊下の突き当たり近くには、またバケツが置いてある。


「ナメクジ野郎には、やっぱ塩だろ!」


敬太は楽しそうにそう言うと、迫ってくるナニカに向けてバケツの中身をぶちまける。


でも凝固剤の時よりも効果はなく、ナニカは塩をまとったまま、止まることなくこっちに向かってきてしまった。


敬太に手を引っ張られて、上ってきた階段とは別の階段を駆け下りた。


2階分下りて、2階フロアに足を踏み入れる。

敬太はこの階にも、あちこちに道具を用意していた。


「霞も手伝え」と言われて、砲丸投げの鉄球をナニカに向けてボーリングみたいに転がした。


グニャリと変形しても、すぐに形を戻すことのできるナニカに効果はない。


また少し廊下を走ってから立ち止まった敬太は、振り向きざまに大きな筒状の物のボタンを押した。


バシュッと音がして筒から飛び出したのは、ネット。

それは多分、泥棒を捕まえるための防犯グッズで、テレビ番組で見たことがある気がする。


< 228 / 247 >

この作品をシェア

pagetop