ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
それを見て敬太は、耳が赤くなるほどにますます興奮する。
「ヤベーッ! それ、絶対に目と口だって!
霞が見た時は目を閉じてたんじゃね?どんな目ん玉してんだろーな。
あー、知りてーよー。人間みたいな目ん玉かな?
その棒線は口だろ?黒いスライムみたいな奴に……」
敬太は私が描いた絵の横に、自分でナニカの絵を書き始めた。
ナメクジみたいな塊に手が2本。足はなし。
人間みたいな小さめの目が2つと、大きく開いた口。
私の絵よりはずっと上手で、立派な化け物に見える。
「体は黒いのに、口だけきっと赤いんだぜ。鮮血みたいに真っ赤でさ!
そんで、口があるってことは喋るぞ。ブクブクボコボコって音は移動する時の音でさ、この真っ赤な口は喋るためにあるんだ!」
黒板前に真斗とその他2名の男子も集まってきて、敬太と一緒に盛り上がる。
「口は喋るためだけにあるんじゃねーよ。食べるためにもだ。
コイツ、なに食べんだろうな?」
「人間……?」
「ギャー! それまじヤベーッて!
霞、喰われるとこだったんじゃん!」