ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
敬太……敬太……。
私を守るために、敬太は別々に逃げるように仕組んだんじゃないかと思っていた。
絵留がターゲットだった時、真斗は一緒に逃げていたから巻き込まれて犠牲になってしまった。
私が真斗と同じにならないようにと、敬太は離れて行ったんだ。
私を想う敬太の気持ちが、嬉しいけれど嬉しくなかった。
敬太が……敬太が死んでしまったら……私には絶望しか残らない。
これからどうやって生きていけばいいのかも、分からなくなっちゃうよ……。
正面玄関の横にある職員通用口のドアの鍵を開けて、外に飛び出した。
懐中電灯は私の手の中。
敬太は明かりも持たずに、体育館の方へ行ってしまった。
最初に真斗の敵討ちだと言っていた、敬太の言葉を思い出していた。
本当に敵討ちするつもりでいたのか、今は怪しんでしまう。
もしかしたら自分もナニカに捕まって、真斗の所へ行こうとしていたんじゃないかと……そんな悲しい想像をしてしまい、頬に涙が流れた。