ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜



敬太が死ぬのは嫌だよ。

ナニカを生み出したのは私なのに、私だけ無傷で守られるのも嫌。

敬太だけを……死なせるわけにいかないよ!


雨の中を走る私は、校舎をぐるりと半周してグラウンドに出た。


体育館の出入口はひとつじゃない。
グラウンド側にもドアが付いている。


そこから敬太も外へ逃げてくれているといいのだけど……何となく、それはない気がしていた。


敬太の性格上、体育館でナニカと対峙しているか、それとも真斗の所へ行こうと、襲われるのを待っているか……。


グラウンドの泥水が上靴に染み込み、スカートに跳ねた。


それを気にしていられる余裕はなく、心で敬太の名前を繰り返し叫びながら体育館の入口を目指して走った。


普段これといった運動をしていないから、息が上がりすぐに苦しくなる。


ハアハアと荒い私の呼吸音と、バクバク鳴っている心音が耳障り。


ザアザアと降りしきる雨音に、遠くから近づいてくるサイレンの音もうるさく聞こえて、それから……あれ?


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