ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜



「俺が何も気づいてないとでも思ったのか?
あんだけアピってこられたら、気付くよ。

絵留は霞の邪魔をしようとしてたろ。テント張りの時も肝試しのクジも企んでたよな。

おまけに肝試しでは、早く戻ろうと言ってもウダウダと霞の悪口を言い続けるから、ウザくて」


「そんな……」


キャンプの時、卑怯な手で私の恋を邪魔してくる絵留が憎かった。


憎しみのあまりに、絵留なんて消えちゃえばいいのにと、ナニカに願ってしまった。


本当に絵留が死んで、私は激しく後悔した。

死ななくてはならないほどのことを、絵留はしていないのにって……。


ナニカを操れるのが私じゃなくて敬太だというのなら、憎しみよりももっと軽い『ウザイから』という理由で、絵留は死ななくてはならなかったというの?


優しくて正義感が強くて、みんなの人気者だったはずの敬太。

私が好きだった敬太は、幻だったのだろうか……。


< 241 / 247 >

この作品をシェア

pagetop