ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
「俺が何も気づいてないとでも思ったのか?
あんだけアピってこられたら、気付くよ。
絵留は霞の邪魔をしようとしてたろ。テント張りの時も肝試しのクジも企んでたよな。
おまけに肝試しでは、早く戻ろうと言ってもウダウダと霞の悪口を言い続けるから、ウザくて」
「そんな……」
キャンプの時、卑怯な手で私の恋を邪魔してくる絵留が憎かった。
憎しみのあまりに、絵留なんて消えちゃえばいいのにと、ナニカに願ってしまった。
本当に絵留が死んで、私は激しく後悔した。
死ななくてはならないほどのことを、絵留はしていないのにって……。
ナニカを操れるのが私じゃなくて敬太だというのなら、憎しみよりももっと軽い『ウザイから』という理由で、絵留は死ななくてはならなかったというの?
優しくて正義感が強くて、みんなの人気者だったはずの敬太。
私が好きだった敬太は、幻だったのだろうか……。