ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
敬太が話し終えても、クラスの中はシーンと静まり返っていた。
朝のホームルーム開始の予鈴が、ことさらに大きく聞こえる。
担任の先生が何者かに殺されたというだけでショックなのに、その犯人が化け物の可能性が高いなんて言われたら、顔色をなくして当たり前かもしれない。
沈黙の中で、みんなそれぞれナニカについて考え込んでいるみたい。
数十秒の静寂の後、男子の一人がポツリと言った。
「ナニカは今、どこにいるんだろう……」
ナニカは今、どこに潜んでいるのか?
もしかして、このクラスの様子を隠れて見ているんじゃないだろうか?
それは、どこから?
窓? 壁? 天井?
それとも……私が今立っている足元の床……?
「キャアアアッ‼︎」
女子の一人が突然、鋭い悲鳴を上げて、教室の角に向けて駆け出した。
それに釣られるように、他の女子も男子も、叫びながら壁際や窓際に逃げて行く。