ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
琴美と梨沙は、純粋にお化け話が怖いからナニカの話題を嫌がっているみたい。
琴美は「ごめん、ちょっと用事あるからもう帰るね」と、話の輪から抜けて帰って行った。
梨沙も「部活に行かなくちゃ」と、琴美の後に続こうとして私達に背を向けたけど、数歩進んでから思い直したように引き返してきた。
「梨沙、どしたの?」
「ええと、敬太に話が……。
言い難いんだけど、私の部活の先輩がね……」
高めの位置で結わえたポニーテールを少し揺らして、梨沙はこんな話をし始めた。
梨沙の部活は女子バレーボール部。
男子バレー部と女子バレー部は、合同の練習メニューもあっていつも一緒だから、とても仲がいいみたい。
その男子バレー部の3年生に、飯塚先輩という人がいて、その人を中心とした男子バレー部の3年生数人が、この前、敬太をシメテやろうかという話を冗談ぽく言っていたらしい。
「は? なんで俺がバレー部の3年にシメられねーとなんねーの?」
「えっとね、飯塚先輩ってオカルト系の話を信じないと言うか……大キライなタイプなの。
桜井先生の事件で犯人が名乗り出てもまだナニカの仕業だって思っている生徒が校内に大勢いるし、
うちの学校がオカルト話一色になっているのは、敬太が騒いでいるからだって、飯塚先輩は言っていて……」