ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
四つ折りにされた小さなメモ用紙を敬太に渡して、飯塚先輩達は体育館の方向へと去っていった。
呼び出しの、場所と時間が書いた紙……。
それは、敬太がすぐにズボンのポケットに入れてしまって、真斗が「見せろ」と言っても出そうとしない。
敬太が真斗を無視して、足早に廊下を歩き出す。
真斗は敬太を追いかけて……すぐに2人の姿は見えなくなった。
2人がいなくなってから、2-5の前の廊下はザワザワし始めた。
「敬太の奴、マジでヤバくね?」
「どうしよう……先生に言った方がいいかな?」
「それだと、敬太も怒られそうじゃね?」
そんな会話が交わされるだけで、解決策なんて見つからない。
私は梨沙の姿を探していた。
さっきまで近くにいたはずなのに、あれ?どこに行ったのかな……。
キョロキョロしていると、教室の後ろのドアからこっそりと出て行こうとしている梨沙の姿を見つけた。
急いで駆け寄って、梨沙の腕を掴んで言った。
「梨沙、これから部活に行くんだよね?
お願い、バレー部の先輩達を止めてよ。
このままだと、敬太がやられちゃう!」