空蝉
ふたりでファーストフード店に居座り、あれやこれやと、夏休みをどう満喫するかと議論を続けた。
よく関係のない話に脱線してしまったが、やはりガールズトークほど楽しいものはなく、アユとケイは時間を忘れて話し込んだ。
何より、悠生とのことをノロケているケイは可愛いから、アユはついつい聞いてあげてしまうのだ。
「あ、もうこんな時間じゃーん」
ケイの言葉で時計を見る。
気付けばここに来てから2時間以上が経っていた。
「ごめーん、アユちゃーん。私今日、お父さんが早く帰ってくるから、それまでに帰らないとまずいんだよー」
家族仲がよさそうで、羨ましいなと、少し思う。
「いいよ。じゃあ、そろそろ切り上げようか」
席を立ち、ふたりでファーストフード店を後にする。
外はうだるような暑さ。
夏本番って感じだ。
早く帰らなきゃと言っていたわりに、ケイは立ち並ぶショーウィンドウの前でいちいち足を止めては、「これ可愛いね」とか「これ欲しいけど高い」などと言っている。
元気だな。
アユはお菓子の山に目を輝かせる子供を見ている気分だった。
「あ!」
そこで突然、ケイは声を上げた。
「忘れてた! 私、帰りにミスド買おうと思ってたんだった! アユちゃん、ちょっと戻っていい?」
幸いにも、ケイの目的のドーナツ屋はすぐそこだ。
どうせ暇だし。
アユはまた「いいよ」とうなづいた。