空蝉
4
疲れたのか、エミはそのまま眠ってしまった。
充はそんなエミの寝顔を見ながら、これからのことを思案した。
眠れないまま、深夜1時を過ぎた頃。
突然、充の携帯が鳴った。
ディスプレイには【親父】と表示されていて、驚いた充は二度見してしまった。
父から電話が掛かってきたのなど、未だかつて初めてだ。
嫌な予感の方が大きかった。
それでも、どうしてだか無視することもできず、恐る恐る通話ボタンを押した。
「母さんから聞いたよ。家を出たそうだな」
単刀直入な父。
だからって、怒っているという風でもない。
「母さん、魂が抜けたみたいな顔をしているぞ。家に帰ってきて晩飯が用意されていなかったのは、初めてだったよ」
母は、父が家に帰らない日でも、絶対に父のための食事の用意は欠かさなかった。
だから、それも手に着かないほどの落ち込みようなのだろうとは、想像に易い。
しかし、そんなことは覚悟の上だ。
「俺は帰らねぇぞ」
決意を持って低く吐き捨てる充。
父はなぜか「ははは」と笑い、
「別にお前がそうしたいなら、父さんは止めない。もういい大人なんだから、自分の人生くらい自分で決めればいいさ」
捨てたつもりが、捨てられたのだろうか。
やっぱり俺はあんたにとって、その程度の存在でしかないのかよ。
唇を噛み締めた充に、電話口の向こうの父は、