空蝉
エミはこてりと充の体に頭を預け、



「ねぇ、それより真面目な話、これからどうするの? いつまでここにいるつもり?」


不安そうな声色だった。

充は息を吐いて宙を仰ぎ、



「とりあえず、明日、朝になったら家に帰るよ。まだ先のことはわかんねぇけど、親父やおふくろと、色々話そうと思う」

「え?」

「逃げ出す形でお前と一緒に暮らしたくねぇし。胸を張って家を出るためっつーか。ちゃんとしなきゃと思ってな」

「………」

「それに、どうせなら、お前とのことだって認められてぇじゃん? そのためだと思ったら、別に苦じゃねぇし」

「充……」


エミの目の淵がまた赤くなる。

泣かせるつもりで言ったわけではなかったのだが。



「ありがとう」


エミは、充の服の裾を掴んで声を震わせながら、



「私、充のそういうところを好きになったの」


どういうところだかは、わからない。

でも、充は「そうか」とだけ返しておいた。


今、胸の中にエミがいることにひどく安堵して、だから他のすべてはどうだってよく思えたのだ。




幸せだった。


きっともう、愛の磨き方を間違うことはないだろう。

エミと一緒なら、大丈夫だ。

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