空蝉
ぼやいたケイを、悠生は「やめとけよ」と一蹴した。



「アユ、そういうの嫌がるんじゃね?」

「どうして? 私だったら自分のカレシをみんなに自慢したいと思うけど」


っていうか、隠されると余計、知りたくなるもんじゃん。



アユはギャルっぽいファッションやメイクをしているし、何事においてもあまり積極的ではないため、他人からは敬遠されがちだ。

が、実はすっぴんでも普通に美人だし、人を気遣える優しい子だとうことを知っているからこそ、ケイはアユと仲よくなったのだ。


アユは、真理と、似てないようで似てる気がする。


どこがどうとかじゃないけど、ケイはそう思うのだ。

だから、もっとアユの心に触れたいと思うし、何でも話してほしいとも思うのに。



なのに、悠生は呆れ顔になった。



「アユはケイみたいな感じじゃないだろ」


アユちゃんのこと、よく知ってるんだね。

なんてことは、言えやしない。


代わりに、ケイはさらに口を尖らせた。



「あのアユに、せっかくカレシらしき男が現れたんだぞ? 自分から言うまで待っててやれよ」


私に対しては冷たいくせに、アユちゃんのことになると途端にお兄ちゃんぶったことを言っちゃって。


ケイはいつも、寂しい気持ちになってしまう。

別に、アユと悠生の関係を疑っているとかではないけれど。



「大体、男嫌いだなんて言ってたくらいだし、そこに至るまでには、よっぽどの理由があったんじゃねぇの? あんま追求してやるなよな」


4年も付き合っていると、色んなことが、もう何だかよくわからない。

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