空蝉
悠生と付き合ってきた、この4年間のことを思う。
頭がよくて、スポーツ万能で、そこそこ顔もよくて、面倒見のいい性格だから、誰からも平等に人気の悠生。
対して、特に何の取り柄もなく、そこら辺に転がる石ころと同じような自分。
いつも私が一方的に好きなだけ。
告白したのも私からだし、デートの約束ひとつ取っても、私から言い出したことに悠生が返事をするだけの繰り返し。
悠生はきっと、仕方がないから私と付き合ってるだけで、いつか別れようと言われるのではないかと、ケイはいつもビクビクしている。
いっそ、別れてあげるのが悠生のためなのではないかと思う時もあるが、でもやっぱり好きだから、そんなこともできなくて。
そうやって過ごしてきた、この4年間。
お互いに違う大学に入ったら、お互いに違う会社に就職したら、どうなってしまうのだろう。
悠生のことを好きになる女の子は、きっといっぱいいるはずだ。
私よりも可愛かったり、私よりも頭がよかったりする女の子ばかりだと思う。
そうなってしまった時、私はどうしたらいいのだろう。
答えの出ない堂々巡りが続く。
悶々としながら帰宅したら、玄関先に父の靴があった。
父の帰宅が早いのは珍しいことだ。
急いで靴を脱いで足早にリビングに向かったのだが、そこには、父と母がテーブルを挟んで沈痛な顔で沈黙を作っていた。
「あら、おかえりなさい」
母はケイに気付くも、心ここにあらずといった様子で言って、席を立つ。
「晩ご飯、急いで作るから、着替えてらっしゃい」
「うん」
リビングを漂う重苦しい空気に、ケイは窒息しそうだった。