空蝉


どれだけ眠っても、両親が離婚を決めたことは夢にはなってくれなくて。

でももう、諦めの方が大きかった。


制服を整えて、学校に向かう。


教室で、何も知らないアユは、ケイに「おはよう」と笑顔を向けてくる。

適当に話していたら、悠生が入ってきて、目が合った。



「おはよ。悠生がこんな時間に来るなんて珍しいね。いつもはもっと早いのに。ねぇ? ケイ」


同意を求められたが、ケイは何も返せなかった。



「え? 何? 何か空気やばくない? ふたり、喧嘩でもしてんの?」


困惑するアユ。

アユの方は見ず、ケイは悠生を真っ直ぐに見て、



「別れようよ、悠生」


何も言わない悠生。

ひどく驚いた顔をするアユ。


教室中の喧騒が、その瞬間、止んだ。



「別れよう」


もう一度、はっきりと言った。

やっぱり悠生は何も言わないままで、



「ちょっ、ちょっと待ってよ、ケイ。ほんとどうしたの? 喧嘩でもした? ねぇ、冗談でしょ?」


アユは焦りながら、仲を取り持とうとしてくれていたけれど。



「私、本気だよ。本気で悠生と別れようと思ったの」


悠生は顔をうつむかせる。

言い切ったケイは、教室を出た。



「ケイ! ねぇ、ケイってば!」
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