空蝉
「あ!」


翔は突然、大きな声を上げた。

びくりとするケイとアユ。



「今度は何?」


怪訝に聞くアユだったが、翔はケイを見たまま、



「ケイちゃんってもしかして、うちの妹と仲よくしてくれてた?」

「……え?」

「真理っていうんだけど。何度かプリクラ見せられたことあったし。葬式も来てくれたよな?」


ケイは目を見開いた。



葬儀のあの日、茫然と立ち尽くしていた真理の兄。

あの、色を失ったような目だけははっきりと覚えていたが、言われて初めて、顔全体までちゃんと思い出した。


しかし、かつて親友だった真理の兄が、今、高校でできた親友の想い人だなんて。



「うそっ……」


真理の兄が元気でよかったと思った。

そして、それと同時に、この奇跡的なことに涙が溢れて。


私は今日、何度泣かされればいいのかと思う。



翔はふっと笑った。



「真理と仲よくしてくれて、ありがとな。葬式の時のことも、わざわざ来てくれたのに、俺、挨拶もできなくて」


ケイはふるふると首を振る。

感動から現実に引き戻されて、そしたら胸が鷲掴まれたように痛くなった。



「私が悪いんです。私が真理のこと殺したの」


気付けば懺悔するような言葉が漏れていた。

今まで誰にも言えなかったこと。


「え?」と眉根を寄せる翔に、ケイは、
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