空蝉
「真理とは親友だと思ってた。でも、中学2年でクラスが別れて、私、自分のことしか頭になくて、真理のこと気にしてあげられなくて」

「………」

「真理がいじめられてたなんて、全然気付けなかった。気付いてあげられなかった」

「ケイちゃん……」

「真理が死ぬ前の晩、電話掛かってきて。もしかしたら真理はほんとは私にSOSを出そうとしたのかもしれないのに」

「………」

「あの時、私がちゃんと聞いてあげてれば、って、何度も後悔した。そしたら真理は死ななかったかもしれないのに、って」

「………」

「だから、私が真理のこと殺したようなもんなんです」


しゃくり上げながら吐き出した。


真理の兄に罵倒されれば、許される気がしていた。

むしろ、そうしてくれれば楽になれるとさえ思っていた。



だけど、翔は、またふっと笑い、



「真理は自分で決めて、自分で命を絶ったんだ。他にもたくさんの選択肢があったのに、真理はそれを選んで実行した」

「お兄さん……」

「ケイちゃんは何も悪くない。それに、あれが誰かの所為だっていうなら、俺の所為であり、みんなの所為でもある。誰かひとりの責任じゃない」


だから気にしなくていいとでも言われたかのような台詞。



「ありがとな、今でも真理のこと忘れないでいてくれて。あと、アユと仲よくしてくれて」


涙が止まらなかった。

それでも、ケイは嗚咽混じりに声を出す。



「……お兄さん、は」

「うん?」

「お兄さんは、あれからどうしてましたか? 真理ママは? 『よっちゃん』は? 元気ですか?」


翔は、途端に困ったような表情になり、



「おふくろはあれからすぐに病気でね」

「え?」
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