空蝉
頭の中の白いのと黒いのは、相変わらず、昼も夜もなくささやき続ける。
初めは半狂乱になりそうだった。
それでも、慣れてみれば、ただの耳鳴りでしかない。
高校2年になった。
顔を合わせる度に「好き」、「付き合いたい」とストレートな真理。
しかし、いつもヨシキはそれに対して「大人になったらね」と、笑顔で同じ言葉を返すだけ。
真理に諦めさせたいと思う反面、まだ俺のことを好きでいてくれるのだという安心感で、やっぱりずっと、ヨシキはぐちゃぐちゃだった。
そして、それは突然だった。
母がいなくなった。
正確に言えば、ヨシキを捨てて男と逃げたのだ。
もう顔を合わせても会話さえなかった母だったが、捨てられたという事実は自分が思っている以上に悲しいことだった。
これから俺はどうしたらいいのだろう。
でももう、そんなことを考えることすら面倒だ。
からっぽになった家でひとり、ぼうっとしていると、
「よっちゃん! 開けて、よっちゃん!」
ドンドンとドアを叩く音。
声で真理だとわかり、体が勝手によろよろと動く。
ドアを開けたら、真理は涙目で。
「お兄ちゃんから聞いた。よっちゃんのお母さん、ほんとにいなくなっちゃったの?」
「見ての通りだよ」
部屋に入ってきた真理は、がらんとした室内を見て目を丸くしていた。
「何もないでしょ。俺と同じ。ぽっかり空いてる」
初めは半狂乱になりそうだった。
それでも、慣れてみれば、ただの耳鳴りでしかない。
高校2年になった。
顔を合わせる度に「好き」、「付き合いたい」とストレートな真理。
しかし、いつもヨシキはそれに対して「大人になったらね」と、笑顔で同じ言葉を返すだけ。
真理に諦めさせたいと思う反面、まだ俺のことを好きでいてくれるのだという安心感で、やっぱりずっと、ヨシキはぐちゃぐちゃだった。
そして、それは突然だった。
母がいなくなった。
正確に言えば、ヨシキを捨てて男と逃げたのだ。
もう顔を合わせても会話さえなかった母だったが、捨てられたという事実は自分が思っている以上に悲しいことだった。
これから俺はどうしたらいいのだろう。
でももう、そんなことを考えることすら面倒だ。
からっぽになった家でひとり、ぼうっとしていると、
「よっちゃん! 開けて、よっちゃん!」
ドンドンとドアを叩く音。
声で真理だとわかり、体が勝手によろよろと動く。
ドアを開けたら、真理は涙目で。
「お兄ちゃんから聞いた。よっちゃんのお母さん、ほんとにいなくなっちゃったの?」
「見ての通りだよ」
部屋に入ってきた真理は、がらんとした室内を見て目を丸くしていた。
「何もないでしょ。俺と同じ。ぽっかり空いてる」