空蝉
カイジからだった。

何事なのかと首をかしげながら通話ボタンを押してみたら、



「真理ちゃんが死んだ。自殺らしい」

「え？」


何を言われているのかわからなかった。


言っていい冗談と悪い冗談がある。

笑おうとしているはずなのに、ヨシキの顔は引き攣って、



「落ち着け、ヨシキ。俺らも戸惑ってる。でも、事実なんだ」


電話口の向こうの声は震えていた。

ヨシキは膝から崩れた。




後にわかったことだが、真理は学校でいじめられていたらしい。

そんな素振りは見せられなかったため、誰ひとりとして気付かなかったが、かなり陰湿なことをされていたそうだ。


で、真理は学校のトイレで首を吊った。


原因は、ヨシキと付き合っていたこと。

どんな内容だったのかはわからないが、真理は友達との喧嘩の時に、「私はよっちゃんと付き合ってるの」と言ったらしく、そこから妬みや恨みを向けられたのだろう。




こんな顔なんていらないと思っていた。

こんな見た目は気持ちが悪いと思っていた。


みんなに好かれたいなどと思ったことは一度としてなく、真理を愛し、真理だけに愛されて、ただ静かに暮らせたらそれでよかったのに。




「どうしてだよ約束したのにお願いだから目を覚ましてよ俺をひとりにしないでよ愛してるのに真理がいてくれればよかったのにこんなの嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁあああああ」


縋るように泣き叫びながら、真理を棺から出そうとしたら、充にはがい締めにされた。

それでも暴れていたら、カイジも加わり、「いい加減にしろよ」と怒鳴られた。


ヨシキはそこでこと切れた。
< 182 / 227 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop