空蝉
目を覚ました時にはもう、真理は骨になっていて、骨壷に収められていた。



しくしくと泣き続ける翔の母。

その傍らで、翔はどこを見ているのか、うつろな目で佇んでいる。


ヨシキはそんな翔によたよたと近付き、



「俺が悪いんだよ! 真理が死んだのは俺の所為なんだよ! なのにどうして翔は俺を責めないの? 怒ってよ! 殴ってよ! 殴り殺してくれたっていい! 俺を真理のところに連れて行ってよ!」


真理は死んだし、それは紛れもない事実だ。

だったら一分でも一秒でも早く、真理のところに行きたかった。


こんな世界ではもう生きられなかった。



なのに、翔は、



「お前を殺して何になんの? それで真理が生き返るのか? 自分ひとりだけ楽になろうとしてんじゃねぇよ」


冷たくヨシキに吐き捨てた。




泣いて、泣いて、泣き疲れて、気を失うように眠りに落ちる。

あれから何日経ったのか、わらない。


朦朧とする意識の中で、それでもまだ生きていることに自嘲した。


ヨシキはずっと握り締めていた手の中の小さな瓶の蓋を開けた。

中には、少しだけ分けてもらった真理の骨が。



『よっちゃんと結婚して、よっちゃんの家族になる』



また涙が溢れて。


ヨシキは真理の骨のひと欠片を口に入れ、そのまま飲み込んだ。

砂利を食べたような感じだった。



真理の一部を食べれば、それが自分の血肉となり、ずっと一緒にいられるはずだ。



そう思ったのに、いざ食べてみたら、そこから何も生まれなかった。

真理は確かに死んで骨になったが、骨はもうあの頃の真理ではないのだから。


じゃあ、真理はどこにいる?
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