空蝉
翔はあれからすぐに引っ越したらしく、顔さえ合わせることはなくなった。

風の噂では荒れていると聞いたが、ヨシキは何も言える立場になく、それ以上に何か言えるほどの気力もなかった。


誰もヨシキを責めてくれなかった。


別に許されたいわけじゃない。

責められれば、償うために死を理由にできるのに、それさえさせてはもらえない。



『自分ひとりだけ楽になろうとしてんじゃねぇよ』



翔の言葉が鼓膜の奥にこびり付いて離れない。

どうすればいいのかわからなかった。




そんな折、例の芸能事務所の社長から電話が掛かってきた。




「やっぱりもう一度会いたいんだ」、


「きみが欲しい」、

「諦めきれない」。



ヨシキはそれを理由に、逃げるように地元を離れた。

そして、あれから、生きているのか死んでいるのか曖昧な日々を繰り返し、今日で5年。






色とりどりの花やお菓子やぬいぐるみに囲まれた真理の墓の前で、ヨシキは泣いた。

どんなに泣いても涙は涸れることがない。


真理に会いたい。


願うことは、今もそれひとつ。

ただひとつの願いなのに、叶わぬ現実が、ひどく辛い。



「真理……」


かすれた声でその名を呼ぶ。

愛しい、愛しい人の名を。

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