空蝉
まったく興味がない。
なのに、悠馬は言いたくてたまらないという顔で、
「美雨ちゃんっていうらしいぞ。『美しい雨』って書くんだって。綺麗な名前だろぉ?」
だからどうしたというのか。
ヨシキは、早くスタジオを出て煙草を買いに行きたかった。
それなのに、悠馬はまだ話を続けたいらしく、
「どうして俺があの子の名前を知ってるかって? それはな、カメラマンの瀬尾っちに聞いたからだよ。でも、瀬尾っちって何であんなに人の顔と名前覚えるの得意なんだろうな。すごいよな。つーか、美雨ちゃん可愛いと思わねぇ?」
と、ひとりで問答している始末。
相変わらずよく喋る男だなと、他人事のように思った。
ヨシキのまわりには、こんなうるさいやつは珍しい。
「可愛いと思ってるなら、悠馬があの子とラブを始めてみなよ」
「いや、俺カノジョいるし」
「いつから一途なキャラになったの? この前まで3股自慢してたくせに」
「俺は生まれ変わって一途になったのだよ、よっしーくん」
ヨシキはそれを適当に受け流し、「はいはい」と言っておいた。
が、悠馬はびしっとこちらに人差し指を向け、
「お前、マジで誰でもいいからカノジョ作れよ。このままじゃあ、ホモでスキャンダルだぞ」
「いるよ、カノジョ」
空にね。
と、心の中で付け加えておいた。
ヨシキの発言に、悠馬は仰け反ったように驚き、
「嘘だろ? 信じらんねぇ。そんな話、今まで聞いたことなかったぞ」
「だって、言ったらスキャンダルになっちゃうでしょ」
冗談混じりに笑いながら返し、「じゃあね」とヨシキはその場を去った。
真理に会いたいと、いつも突然、何の脈絡もなく思ってしまう自分がいる。
吐き出したため息がぼとりと落ちた。
なのに、悠馬は言いたくてたまらないという顔で、
「美雨ちゃんっていうらしいぞ。『美しい雨』って書くんだって。綺麗な名前だろぉ?」
だからどうしたというのか。
ヨシキは、早くスタジオを出て煙草を買いに行きたかった。
それなのに、悠馬はまだ話を続けたいらしく、
「どうして俺があの子の名前を知ってるかって? それはな、カメラマンの瀬尾っちに聞いたからだよ。でも、瀬尾っちって何であんなに人の顔と名前覚えるの得意なんだろうな。すごいよな。つーか、美雨ちゃん可愛いと思わねぇ?」
と、ひとりで問答している始末。
相変わらずよく喋る男だなと、他人事のように思った。
ヨシキのまわりには、こんなうるさいやつは珍しい。
「可愛いと思ってるなら、悠馬があの子とラブを始めてみなよ」
「いや、俺カノジョいるし」
「いつから一途なキャラになったの? この前まで3股自慢してたくせに」
「俺は生まれ変わって一途になったのだよ、よっしーくん」
ヨシキはそれを適当に受け流し、「はいはい」と言っておいた。
が、悠馬はびしっとこちらに人差し指を向け、
「お前、マジで誰でもいいからカノジョ作れよ。このままじゃあ、ホモでスキャンダルだぞ」
「いるよ、カノジョ」
空にね。
と、心の中で付け加えておいた。
ヨシキの発言に、悠馬は仰け反ったように驚き、
「嘘だろ? 信じらんねぇ。そんな話、今まで聞いたことなかったぞ」
「だって、言ったらスキャンダルになっちゃうでしょ」
冗談混じりに笑いながら返し、「じゃあね」とヨシキはその場を去った。
真理に会いたいと、いつも突然、何の脈絡もなく思ってしまう自分がいる。
吐き出したため息がぼとりと落ちた。