空蝉
「怒ってるよ、俺だって。でもそれは、お前の所為だからどうこうじゃなくて、何で言ってくんなかったんだよ、ってところにムカついてて。つーか、気付かなかった自分にもすげぇ腹立ったし」
肩をすくめた翔は、
「けどさ、お前は今も真理のことマジで愛してるわけじゃん? そこまで想われてたら、真理も幸せなんじゃねぇのかなぁ、って」
「………」
「真理は可愛い妹だし、お前は幼馴染で親友だ。だから、どっかのカス野郎と適当に恋愛して死ぬよりはずっとよかったんじゃねぇのかなって、最近は思うし」
拭っても、拭っても、涙が溢れて止まらない。
翔は苦笑いを浮かべながら、
「真理はさ、多分、何もかもを守りたかったから死んだんだよ」
「え?」
「もういじめられるのは耐えられない。でも、ヨシキと付き合ってていじめられてるなんて、ヨシキには言えない。悩ませたくない。俺に言ったら別れさせられる。ヨシキと俺の仲も壊れるし、そんなの嫌だ。あの頃の兄貴はキレたら平気で人殺しするような感じだったから、一番言えない。だろ?」
「………」
「真理は日記の最後にこう書いてた。【私は明日死ぬけど、それは悲しいことじゃない】、【みんなの思い出となってずっと一緒に生きられるから】って」
「思い出となって……」
「俺も最近になってやっと、真理の遺品の整理しようと思って、段ボールに詰めて蓋してたやつ開けたら、それ見つけたんだけど」
「………」
「で、こうも書いてた。【私のよっちゃんへの愛は、誰にも消せない】、【私があの世へ持って行くから】、【よっちゃんを愛する気持ちのまま死ねるなら本望だよ】、【ただひとつだけ、よっちゃんと結婚する約束を守れなくてごめんなさい】ってな」
ヨシキは顔を覆った。
嬉しさと悲しさがぐちゃぐちゃになる。
「馬鹿だよ、真理は。俺は生きててほしかったのに。ふたりで一緒に幸せになりたかったのに。そんなの間違ってるよ」
「ほんとにな」
翔は自嘲気味に言った。
それでも翔は息を吐き、
「俺はお前に、真理のことを忘れろとも忘れるなとも言わない。でも、それはちゃんと思い出として残した上で、どんな形であれ、お前も前に進んでほしいと思ってる」
「……前に?」
肩をすくめた翔は、
「けどさ、お前は今も真理のことマジで愛してるわけじゃん? そこまで想われてたら、真理も幸せなんじゃねぇのかなぁ、って」
「………」
「真理は可愛い妹だし、お前は幼馴染で親友だ。だから、どっかのカス野郎と適当に恋愛して死ぬよりはずっとよかったんじゃねぇのかなって、最近は思うし」
拭っても、拭っても、涙が溢れて止まらない。
翔は苦笑いを浮かべながら、
「真理はさ、多分、何もかもを守りたかったから死んだんだよ」
「え?」
「もういじめられるのは耐えられない。でも、ヨシキと付き合ってていじめられてるなんて、ヨシキには言えない。悩ませたくない。俺に言ったら別れさせられる。ヨシキと俺の仲も壊れるし、そんなの嫌だ。あの頃の兄貴はキレたら平気で人殺しするような感じだったから、一番言えない。だろ?」
「………」
「真理は日記の最後にこう書いてた。【私は明日死ぬけど、それは悲しいことじゃない】、【みんなの思い出となってずっと一緒に生きられるから】って」
「思い出となって……」
「俺も最近になってやっと、真理の遺品の整理しようと思って、段ボールに詰めて蓋してたやつ開けたら、それ見つけたんだけど」
「………」
「で、こうも書いてた。【私のよっちゃんへの愛は、誰にも消せない】、【私があの世へ持って行くから】、【よっちゃんを愛する気持ちのまま死ねるなら本望だよ】、【ただひとつだけ、よっちゃんと結婚する約束を守れなくてごめんなさい】ってな」
ヨシキは顔を覆った。
嬉しさと悲しさがぐちゃぐちゃになる。
「馬鹿だよ、真理は。俺は生きててほしかったのに。ふたりで一緒に幸せになりたかったのに。そんなの間違ってるよ」
「ほんとにな」
翔は自嘲気味に言った。
それでも翔は息を吐き、
「俺はお前に、真理のことを忘れろとも忘れるなとも言わない。でも、それはちゃんと思い出として残した上で、どんな形であれ、お前も前に進んでほしいと思ってる」
「……前に?」