空蝉
「真理は死んだ。もういねぇ。それは事実だし、変えられねぇ。けど、だからって、その所為でお前まで何もかもを諦めんな」

「………」

「真理はそんなことは望んでないはずだし、お前に後追いをしてほしいとも思ってないはずだ。あいつは【みんなの思い出となってずっと一緒に生きられるから】って書いてたんだぞ? それってつまり、自分が死んでもお前にはちゃんと生きててほしいって意味じゃねぇの?」


ヨシキはもう嗚咽さえ押し殺せなくなった。

泣きじゃくるヨシキを翔は困ったような目で見ながら、



「今度、死にたいと思ったら、俺らに言え。俺らが責任を持ってお前を殺してやっから」

「え?」

「でも、方法は一番残酷なやつだ。一枚一枚、爪や皮膚を剥がすところから始まって、時間を掛けてゆっくりとな。もう勘弁してくれ、これなら生きてる方がマシだ、って思わせるくらいのことしてやるよ」

「やだよ、そんなの」

「なら、生きてろ」


翔の言葉はシンプルなものだった。

でも、今まで誰にどんな励まされ方をされるよりも、それはずっと胸に響いた。


顔を向けると、翔も、充も、カイジも、笑っていた。



「もう二度とこんな馬鹿なことやってんじゃねぇぞ、ヨシキ」


カイジが歯を見せる。



「ハーブなんかやめとけよ。あんなもんやってたって記憶力が低下して馬鹿になるだけだ。翔でもやめられたんだから、無理とか言わせねぇし」


充も続けた。

翔は「何でそれ知ってんだよ」と、げんなりとしていたけれど。



「とにかくまぁ、そういうことだし、てめぇ、いつまでもぐずぐず泣いてねぇで起きろよ。で、ちゃんと俺らに言わなきゃいけねぇことあんだろ?」


うなづいたヨシキは、よろよろと体を起こした。

そして頭を下げ、



「ごめんね、みんな。今まで、ほんとにごめん。俺はこんなだけど、ずっと友達でいてほしい。です」


恐る恐る顔を上げたら、やっぱり3人は笑っていた。
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