空蝉
「しょうがねぇから許してやるか。なぁ?」

「まぁ、今回だけはな」

「次また同じことしたら、容赦なく縁切るけどな」


わざとらしい言い方ながらも、3人は口々に言った。

ヨシキは泣き笑い顔だ。



「つーか、俺らが4人揃うなんて、真理の葬式以来じゃね? 5年ぶり?」

「そりゃあ、てめぇが女優先させまくるからだろうが、翔」

「は? 俺が悪ぃのかよ。お前ら、いっつも連絡してくるタイミング悪ぃんだよ」

「女なんかいつでも会えんだろ」

「だってお前、辛気臭くてむさくるしい男4人で集まるより、女といる方がよっぽど建設的だろ」

「だから、それが女優先だっつってんだよ」

「あ? 喧嘩売ってんのかよ、てめぇ」


翔とカイジは、なぜか言い争いを始めた。

充は無視して、「ほら、帰るぞ」とヨシキに言った。



「うん。エミちゃんにも、ちゃんと謝らなくちゃね」


すると、充はいきなり顔をしかめ、



「いや、今はやめとけ。あいつ、部屋がガス臭ぇだの、引っ越し早々近所の恥になっただの、発狂してっから。ここで謝りに行ったら、お前、ぶん殴られるぞ」

「じゃあ、俺の部屋で4人で飲むか」


言ったのは、翔。

翔は今の今までカイジと言い争っていたはずなのに、



「もう色々とめんどくせぇことは抜きにして、飲もうぜ、男4人で。5年ぶりだし、積もる話もあんだろ、それぞれ」


そして翔はヨシキの肩を組み、



「まぁ、てめぇはジュースだけどな」


と、笑った。


ヨシキはまた泣きそうになったが、それよりずっと嬉しかったから、笑った。

心の底からの笑顔だった。

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