空蝉
翔の部屋で、男4人で馬鹿騒ぎをしながら飲んだ。
もちろんヨシキは炭酸ジュースだったわけだが、そんなの関係なく、とにかく楽しかった。
一番に潰れたのは、カイジだった。
ここ3日ほどまともに寝てなかったらしく、ソファで大の字だ。
次に潰れたのは、充だった。
充はここに来る前から酒が入っていたし、なのに飲むペースは人より早いため、気付いたら床に転がっていた。
「ったく、大丈夫かよ、こいつら」
呆れた顔をしながらも、翔は何だかんだでふたりに毛布を掛けてやっていた。
翔は昔から優しかったが、こういうことをするタイプではなかったはずだ。
「何か、いい意味でちょっと変わったね、翔」
「そうか?」
「うん。今、俺の知らない翔の一面を見た気がした」
「いつの頃と比べてんだよ」
「そうだったね」
翔とこうやってまともに顔を突き合わせるのは、一体いつぶりなのかと、ヨシキは今更なことを思った。
「ねぇ、仕事してるんだって?」
「バイトだけどな」
「偉いじゃん。どういう心境の変化があったわけ?」
「俺もそれなりに将来とか考えるようなお年頃になったっつーことだよ。いつまでもこんなままでいていいわけねぇし」
「だから真理の遺品整理もしようと思ったってこと?」
翔は、それには答えず、肩をすくめて立ち上がった。
そして、チェストの引き出しから取り出したものをヨシキに差し出す。
「これ、今、俺がマジで付き合ってる女。アユっていうんだけど」
見せられたのは、プリクラだった。