空蝉
「悠生なら、大抵の大学は合格できるでしょ」

「けど、油断大敵って言うだろ?」

「まぁ、それはそうかもしれないけどさ」


などと、話ながら歩いている時だった。



「おい」


向こうからの声に、足が止まった。


嫌な予感がする。

振り向きたくない。



そう思ったアユだったが、隣の悠生は空気も読んでくれず、



「何? あの人、知り合い?」


向こうを指差すので、アユはいよいよ聞こえないフリができなくなった。

硬直したままのアユだったが、



「おい、アユ。てめぇ、こら。無視してんじゃねぇよ」


恐る恐る顔を向けてみたら、やっぱりと言うべきか、翔だった。

しかも、何かすごい怒ってるし。


っていうか、こいつ私の名前、覚えてたのか。


いや、今はそんなことは問題じゃない。

悠生は、不思議そうな顔で、アユと翔を交互に見ていた。



アユは体を震わせる。



「た、助けて、悠生」

「は?」

「いいから、助けて」


どうにかなるわけでもないとわかっていながらも、アユはその場しのぎとばかりに悠生の後ろに隠れた。



ぽかんとする悠生。

さらに怒った顔になる翔。


翔は睨むように、間に立つ悠生に顔を近付け、
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