空蝉
確かに、前に制服で会ったため、学校を調べるのは簡単だろう。

学校さえわかれば、夏休みだろうと、登校日を知ることくらい、どうにでもなるのかもしれない。


けど、でも、



「あんたこれ、ただのストーカーじゃん!」


何でこの人が私に会いに来たのか、わからない。

わざわざ駅で待ってて、その上、こうやって拉致られる理由は、もっとわからない。


翔はイラ立ち紛れに煙草を咥え、



「あの日、何で勝手に帰った?」

「あんたが寝てたからだよ。悪い?」

「じゃあ、何であれ以来、街に行かなくなった?」

「何? 私は毎日、街にいなきゃいけないの? それこそ私の勝手じゃん」


アユがそう吐き捨てた瞬間。

ガッ、と、翔はハンドルを殴った。


びくりとする。



「ずっとお前のこと心配してた。でも、携帯すら知らねぇし。おまけに、あれから街でも見掛けなくなって。だから、何かあったのかと思ってれば」


どうして?

どうしてそんなことを言うの?


あんたには『真理』がいるんでしょ?



「私のことはもう放っておいてよ!」


わめきながら、アユは肩で息をする。


翔は何も言わなくなった。

沈黙が重苦しすぎて、泣きそうになる。



「俺、何かしたか?」


ムカつく。

何なの、こいつ。


私をどうしたいの。
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