空蝉
夏休みの終わりまで、あと4日。
課題をすべて終えたアユは、親から「遅くならない程度になら遊んで来てもいい」と許可をもらった。
「あまり羽目を外し過ぎないなら」と。
その日は日曜日だった。
朝からひとりで映画を観たり、ショッピングをしたりと、アユは街中を歩きまわっていた。
翔と偶然会ったのは、ちょうどお昼の時間だった。
「てめぇ、メール返せや。何やってんのかと思ってれば、こんなとこにいて。ふざけんな」
「うっそ。ごめーん」
映画館で電源を切ったまま、すっかり忘れていた。
携帯を取り出したら、本当に翔からのメールが届いていた。
それでも悪気のない顔をしているアユに、翔は呆れながらも、
「暇してんのか?」
「うん。まぁ、暇かな」
「じゃあ、飯行くぞ」
あんたほんと勝手だよね。
ある意味すごいと、アユは思う。
しかし、たまにはそういうのも悪くないのかもしれないと思い直した。
「奢ってくれるなら、いいよ」
「ビッチか」
でも、翔は笑っていた。
空には入道雲。
灼熱の陽が、ふたりの上から降り注いでいる。