空蝉
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カイジは洗面台の前で歯を磨きながら、鏡に映る、目つきの悪い男の顔に、朝からげんなりとさせられた。
性格の悪さが滲み出てんだよなぁ。
いや、実際、俺、性格悪いけど。
俺が他人なら、絶対、こんな目つきのやつと知り合いになりたくねぇよ。
自分の顔を見る度に、カイジは毎度のことながら、嫌な気分になってしまう。
カイジにはふたりの親友がいる。
翔と、ヨシキ。
共に中学1年からの腐れ縁だ。
翔は身勝手に振る舞いながらも、その実、他人の心の機微に敏感で、チャラく見えても男気のある一面を持ち合わせているため、何だかんだで女にモテる男。
嫌味がないところが逆に嫌味に思うくらい、顔も性格もいいやつなので、カイジは憎み切れないまま、今に至っている。
ヨシキは、翔とは対照的に、温厚で物静かで、優しさの塊みたいな男だ。
おまけに背が高くて外人みたいに整った顔立ちで、それを生かしてモデルなんてやってるため、こちらも結局のところ、女にモテる。
何で俺はあんなやつらと仲よくやってんだろうかと、カイジは今更なことを思いながら、うがいをした。
しかし、昔は馬鹿みたいなことばかりしていた関係も、4年前から少々おかしくなってきた。
翔の妹の真理が死んだ頃からだ。
その直後に母まで亡くした翔は、高校も辞めてしまい、イラ立ちや寂しさを紛らわせるために、喧嘩に明け暮れるようになった。
今は少しばかり大人になったのか、憂さ晴らしの対象を女へと変え、常にわけのわからない女をはべらせている。
気持ちがわからないわけではないため、カイジも易々とは口を出せないが、いい加減、どうにかしろよと言いたかった。