空蝉
郵送すればいいのに、御苦労なことだ。

と、いうか、エミも暇ではないくせに、朝早くからわざわざ充のために動いてやるなんて。


カイジは茶封筒を一瞥し、「どうも」とだけ返した。


カイジは煙草を咥え、火をつけた。

エミも細長い煙草を咥え、カイジのライターを奪い取って火をつける。



「充さん、元気?」

「元気といえば元気だけど、どうなのかしらねぇ、あの人。ほとんど寝てるし、起きててもあんまり部屋から出ないから」

「ナマケモノみたいな人だよなぁ、ほんと」

「まぁ、確かに、動いてるのを見るのが貴重って意味では、似てるだろうけど」


生涯のほとんどを木の上で、しかも寝て過ごすと言われている、ナマケモノ。

充の、常に眠そうな顔を思い出したカイジは、思わず笑ってしまいそうになった。



「知ってるか? ナマケモノって動くのがめんどくさすぎて、腹が減っても気にしない所為で、餓死することもあるんだって」

「ちょっと。さすがに冗談になってないわよ、それ」


エミは煙を吐き出しながら、肩をすくめた。

が、次には真面目な顔になり、



「どうにかしてよ、カイジ。充だっていつまでもあんなままでいていいわけがないわ」

「知るかよ。お前、カノジョだろ。自分でどうにかしろよ。何でもかんでも俺に頼るな」

「それはそうかもしれないけど。でも、あんた以外は頼りにならないじゃない」


またこれだ。

どいつもこいつも、俺を一体、何だと思っているのか。


ひどい胃の痛みを感じる。



「4年前のことさえなければね」


自嘲気味に言うエミに、カイジは心の中で、ほんとにな、と返した。



「とにかく、たまにはご飯にでも連れ出してあげてよ、充のこと。頼んだからね」


一方的に言い捨て、エミは事務所を出ていく。

カイジはため息と共と頭を抱えた。

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