空蝉
酒を浴びるほど飲んで、泣きながらぐちぐち言っていたヨシキは、そのまま疲れて眠ってしまった。
いつもこうだ。
カイジはため息をひとつ吐き、ヨシキをベッドまで運んでやった。
結局、ベッドを奪われる形になるのも、いつものこと。
ヨシキが散らかした場所を片付けて、カイジは部屋を出た。
今回はいつまでこっちにいる気かは知らないが、ヨシキが来ると、カイジは毎度のように部屋を追い出される形になる。
ベッドでヨシキと一緒に眠りたいなどとは死んでも思えないし、だからってソファでも寝たくない。
だから、仕方なく、カイジは違う場所で寝ざるを得ないのだ。
俺の家なのに、と、いつも思うが、半分はもう諦めている。
諦めていると言いながら、俺は結局、ヨシキを甘やかしているだけだと、もうずっと、わかってはいるのだけれど。
郊外のアパートに着いた頃には、すでに日付が変わろうとしていた。
通い慣れ過ぎた道のりは、きっと、目を瞑っていても辿り着けるのではないかと、最近では思ったりもする。
カイジは疲弊した体を押して、101号室のチャイムを押した。
「はい」
少しして、ちひろが出てきた。
ちひろは風呂上がりだったのか、少し髪を湿らせていて。
「カイジくん……」
さして驚いていないのは、こんな不躾な時間に尋ねてくる人間などカイジ以外にいないからだろうが。
すっぴんだと、いつも以上に幸が薄そうな顔になってしまっている、ちひろ。
でも、どうしてだか、こういう方が癒される。