空蝉
ヨシキのこと、エミのこと、充のこと。

翔に言ってやるべきなのか、どうなのか。


でも、その所為で翔がまたあの頃のように荒れやしないかと、思うと何も言えなくて。


結局また、カイジは胃の痛みにひとり苦しむ羽目になる。

煙草の煙を宙に向かって吐き出していると、



「あ、翔さーん!」


乳の見えそうな恰好をした女たちが、人波を縫ってこちらにやってきた。

いや、正確に言えば、翔のところに、と言うべきか。


昔からこうなので、カイジは今更、気にもしないが。



「翔さん、最近全然、遊んでくれないじゃーん」

「そうだよ。今日はうちらと遊んでよー」


翔の腕に絡まり、乳を押し付ける女たち。



今日はこいつらをお持ち帰りか。

と、カイジは呆れた。


しかし、いつもだったら喜ぶはずの翔が、今日はなぜか困ったような顔を浮かべている。



「悪ぃ。俺もうそういうのやめたんだよ」

「は?」


女たちより先に驚いた声を出してしまったカイジ。



聞き間違いだと思った。

いや、それ以外にないはずだ、と。


けれど、翔は、はっきりと、



「俺、好きな女できたから、もう半端なことしたくねぇんだ」


『好きな女』だと?


文句を言いながら去っていく女たち。

カイジはしばらくその言葉の意味を考えてみたけれど、驚きの方が大きくて、何が何だかわからなかった。
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