空蝉
どうしてちひろでなければダメなのかは、わからない。

どこが、何が、いいのかすらも、わからない。


でも、俺は結局のところ、



「あんたがほんとにチロちゃんのこと愛してるって、みんなわかってるわよ。それなのに、あんた本人がそれを認めないのは間違ってると思うけど」


言い当てられたカイジは、反論する気にもなれなかった。


ブスな上に嫌な女。

カイジは諦めるように「そうだな」と返した。



「でも、もういいんだよ」

「カイジ……」

「どうせ今までだって喧嘩ばっかだったし。好きだけじゃダメっつーか、いい加減、潮時だったんだよ、俺らは。だからこれでいいんだ」


カイジは自らを納得させるように言った。

しかし、エミはそれでは引かない。



「あんた、馬鹿じゃないの」


吐き捨てるように言ったエミは、



「あんたは結局、何でもかんでも真理ちゃんが死んだことを理由にしてるだけじゃない。どうしてそのこととチロちゃんのことを別にして考えられないの?」


カイジは目を見開いた。

エミはカイジに怒った顔を近付け、



「あんたがそんな考えしてて、それを人にまで押し付けるから、誰も前に進めないのよ」


どうして俺が悪いんだよ。


いつもみんなして俺に頼るくせに。

俺はお前らのことを考えて、お前らのためを思って言ってやってるのに。



じゃあ、どうすればいいんだよ。

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